-
2F企画展示室
【概要】
白い光は降り注ぐのではなく、そこら中にある。
自然の中、子どもの瞳の中、そして私自身の瞼の中にも。
掬い上げて作品へと昇華させていくその工程、つまり絵作りについて考え直す機会が最近あり、改めて白い画面の中で新しい冒険をしてみた。
まだ冒険の途中であるが、古典的な技法で現代的な表現を目指したいという想いが強くある。
「光と影」を現象と心象の二つの方向から描いた作品は私自身の影であり光でもある。
八ヶ岳の樹影や木漏れ日、そして画面の奥へとつながる空間を描いた作品は、楕円型の光の現象による空間を意識した青い風景画である。
一方で「Monster」のシリーズは不可視である脳の発達からイメージを膨らませた作品で、画面としては平面的な描き方をしている。
この「Monster」は子どもの脳の成長を観察して感じた事がそのまま具象となっている。
最新のシリーズ、森とその影をモノトーンで描いた「光の森」は、画面構成をいくつかに分ける事から始める試みをし、一番上の層に金箔を装飾的に配置したところが特徴的である。
これらの作品は画面に対して異なるアプローチをしているが根底にあるものは同じである。子どもの頃はフワフワとした雲の中の、空想の世界の住人であった。
今は雲肌麻紙にうっすらと胡粉をかけた優しい白い色から作品作りが始まる。
かつてのようにどっぷりと世界に入り込む事が出来たらその作品は上手くいったと言えるのではないかと思う。矢島史織
-
-
「Monster #20」
2021年 雲肌麻紙、膠、墨、岩絵具 90×90cm
矢島史織
-
「光の森」
2021年 雲肌麻紙、膠、墨、岩絵具、金箔 162.1×130.3cm
矢島史織
-
「Monster #20」
-
2F企画展示室
【概要】
2020年以降、内面と向き合う機会が増える中で少しでも外界に触れると、以前とは違う鮮やかさで世界が知覚できるようになりました。
唐松岳に登り目にした厳しい緊張感のある稜線、上高地での澄んだ湖に映る鮮やかな森の緑、屋久島の熱帯植物の湿度のある生命感、滋賀の私のアトリエから眺めることのできる血管のようにも見える木々の枝分かれの様子。
このように私が滞在先で見た風景や、普段見ている風景の形を抽出しつつ、風景と身体のかたちを重ね合わせて描き銅版画にしています。銅版画は鏡であり、あらゆるものをうつす存在です。
さまざまなかたちや存在が映し出された銅版画は鑑賞者の方さえも映すような存在でありたい思っています。松井亜希子
-
-
「Molecules of our bodies are interchanging」
2018年 銅版画 120×180cm
松井亜希子
-
「MIRRORS -cave」
2020年 銅版画 100×130cm
松井亜希子
-
「Molecules of our bodies are interchanging」